特定商取引法


平成21年改正の主なポイント

従前は特定の商品(指定商品)、役務(指定役務)及び権利(指定権利)にのみ、法を適用してきました。しかし、近年、様々な態様の行為(ロコ・ロンドン取引やCFD取引などを電話勧誘販売、訪問販売で契約させる行為)が登場しており、個別に指定していては到底対処しきれない困難に直面しました。そこで、規制対象を全ての商品、役務、権利と、その範囲の制限なく規制することとなったのが最大のポイントです。

1.指定商品、指定役務制の廃止、全ての商品、役務、権利を扱う取引が規制の対象になります。


これまで、特定の商品(指定商品)、役務(指定役務)及び権利(指定権利)にのみ本法が適用されると限定されていましたが、

これからは、別法で消費者被害の是正を規定しているものを除き
原則 全ての商品、役務を扱う取引が規制の対象になります。(原則全てがクーリングオフの適用となります。)


ただし、クーリングオフになじまない商品、役務(自動車、葬儀等)は別途、適用除外として整理・指定されます。

2.訪問販売規制が強化されます。


  ●訪問販売業者に、契約を締結しない旨の意思を表示した消費者に対しては、当該契約の勧誘をすることを禁止します。


  ●訪問販売によって通常必要とされる量を著しく超える商品等を購入する契約を結んだ場合、契約後1年間は契約の解除等ができます。(消費者にその契約を結ぶ特別の事情があったときは例外)


例えば、お年寄りの方が、ふとん類をたくさん購入させられた場合、契約後1年間は返品(解除)することが出来るようになりました。


通常過量には当たらないと考えられる分量の目安として、寝具の場合は「原則一人が使用する量として一組」とされています。(日本訪問販売協会「通常過量には当たらないと考えられる分量の目安について」(平成21年))


〜具体的に契約解除ができる場合〜
・ある事業者の1回の販売量が過量である場合
・過去の購入の累積があり、さらなる販売行為によって過量になる場合

3.通信販売の規制が強化されます。


  ● 返品の特約が広告に表示されていない場合に限り、購入者は、商品を受け取った後、
8日間、返品(契約の解除)することができます。(送料は購入者負担)


  ●消費者があらかじめ承諾しない限り、迷惑広告メールの送信を禁止できます。


改正割賦販売法との関連で


4.クレジット規制が強化されます。(改正割賦販売法)


  ●個別クレジット業者に訪問販売等を行う加盟店の行為について調査することを義務づけ、不適正な勧誘があれば、消費者へ与信することを禁止します。
  ●訪問販売等による売買契約が虚偽説明等により取り消される場合や、過量販売で解除される場合、個別クレジット契約も解約し、消費者が既に支払ったお金の返還も請求可能になります。
  ●クレジット業者に対し、指定信用情報機関を利用した支払能力調査を義務づけるとともに、支払能力を超える与信を禁止します。

5.割賦の定義を見直し、2ヶ月以上後の1回払い、2回払いも規制対象になります。(現行は3回払い以上)(改正割賦販売法)

別法による是正が期待できるケース


最近では、新手の悪質行為による被害が報告されています。


  ●「訪問買取」
例えば、「ペースメーカーに使うプラチナなどの貴金属が不足しているから、ネックレスなどを売ってほしい。人の命を助けられる。」
などと親切心につけこみ、無理やり貴金属などを、安価で売却させられる「訪問買取」が被害として報告されています。
(国民生活センター 「ペースメーカーの材料に!?・・・新手の貴金属の訪問買取」(オンライン) 入手先〈http://www.kokusen.go.jp/mimamori/mj_mailmag/mj-shinsen105.html〉(参照 2011-08-30)


実際、プラチナはペースメーカーの材料ではないので、買取業者は金の相場の高騰から市場に高く売却するために、詐欺的に貴金属を安く買い取る、いわゆる買い叩きをしているにすぎません。


重要なのは、訪問買取は、現在の特定商取引法では対処できず、クーリングオフできないので注意が必要だということです。

出典:
・経済産業省「「特定商取引に関する法律及び割賦販売法の一部を改正する法律の施行
期日を定める政令」について」(平成21年)
・経済産業省商務流通グループ「特定商取引法の改正について」(平成21年)

これらの情報はあくまでも参考情報です。判断は各自の責任でお願いします。
個別相談はどうぞ当事務所にご相談ください。

・特定商取引法概説

特定商取引法は訪問販売や通信販売など、情報が一方的であったり、心的プレッシャーがかけられたりすることによって、自分の意志に反するような契約を結んでしまった場合に対処するための法律です。まずは業者に対して一定の規制をかけ、同時に、そのような不本意な契約を結んでしまった消費者を保護するということが目的とされています。特定商取引法が対象としている取引の形態は、訪問販売、通信販売、電話勧誘販売、連鎖販売取引、特定継続的役務提供、業務提供誘引販売取引の6形態です。
訪問販売取引・・・・事業者が自分の営業所や代理店など以外の場所で売買契約や役務の提供を契約するような形式の販売方法。または、営業所など以外から自己の営業所などに同行させた上で契約を行うような販売方法のこと。
通信販売取引・・・・事業者が消費者に対して郵便などの方法を用いて売買契約の申し込みをさせる販売方法。ただし、電話勧誘販売は別に規定されており、この通信販売には含まれず。
電話勧誘販売取引・・・・事業者が電話をかけて売買契約の勧誘を行い、消費者が郵便などによって当該契約の申し込みを行う形態の販売方法。
連鎖販売取引・・・・物品の販売の事業で、商品の再販売、受託販売、あっせんをする者が特定利益を得ることを目的として誘引される販売方法。マルチ商法といわれる販売方法。
特定継続的役務提供取引・・・・特定継続役務提供とは特定継続役務を継続的にある期間提供し、それに対して消費者が金額を支払う形式の契約。特定継続役務には消費者の知識向上や美化を目指すものなどで、必ずしもその目的が達成されるとは限らないものが該当する。例えば、エステ、外国語教室、家庭教師契約などが該当。
業務提供誘引販売取引・・・・物品の販売であって、その商品に従事することにより得られる利益(業務提供利益)を得ることでもって消費者を誘引し、取引契約を行う方法である。内職方法やモニター商法が該当。

1.訪問販売取引

訪問販売では、契約に際して契約内容について明記されている書面を交付することが条件とされます。そしてそれとは別個に、消費者にはクーリングオフによって契約を解除することが認められています。
販売訪問における書面の交付

訪問販売において、販売業者又は役務提供事業者は、営業所等以外の場所か営業所等においてを問わず、顧客から商品などにつき売買契約の申込みを受けたときは、直ちに、その申込みの内容を記載した書面をその申込みをした者に交付しなければならないとされています。その際に必要とされる記載事項は以下の通り。
@

A

B

C

D

E

商品若しくは権利又は役務の種類

商品若しくは権利の販売価格又は役務の対価

商品若しくは権利の代金又は役務の対価の支払の時期及び方法

商品の引渡時期若しくは権利の移転時期又は役務の提供時期

クーリングオフに関する事項

その他、経済産業省令によって定められた事項

禁止行為

事業者は、訪問販売による売買契約・役務提供契約の申込みの撤回・解除を妨げるため(クーリングオフの妨害など)、不実のことを告げる行為や消費者を脅迫するようなことをしてはならないとされています。

上記の条件を満たさない事業者や禁止行為を行っている事業者に対しては主務大臣によって是正するよう指示がでますが、なお、それに従わない場合は最高1年間の業務停止ということになります。

クーリングオフの活用
訪問販売における契約では、消費者にクーリングオフを活用することが認められています。クーリングオフは起算日から8日が期限となっています。→クーリングオフ

2.通信販売取引

通信販売取引では、広告の表示方法に必要事項が記載されることが事業者に義務付けられています。また、承諾の送付が事業者には義務付けられています。平成21年の改正により返品の特約が広告に表示されていない場合に限り、購入者は、起算日から8日間を期限としてクーリングオフすることができるようになりました。(送料は購入者負担)

広告の表示方法
事業者は、通信販売をする場合の商品の販売条件または指定役務の提供条件などについて広告をするときは、広告上に当該商品に関する事項を表示することが義務付けられます。具体的には次のような事項があげられます。

@

A

B

C


D

商品の販売価格・役務の対価など

商品の代金・役務の対価の支払の時期・方法など

商品の引渡時期・役務の提供時期など

商品若しくは指定権利の売買契約の申込みの撤回又は売買契約の解除に関する事項(特約がある場合には、その内容を含む。)

その他、経済産業省令で定める事項

禁止行為

事業者は、通信販売について広告をするときは、上記の必要表示事項について、著しく事実に相違する表示を行うことや、誇大広告をすることが禁じられています。
承諾の送付

事業者は、商品や役務につき代金の支払いを先に行うことを条件とした通信販売をする場合には、当該商品・役務の申込みを受け、さらに商品の代金を受領した後に、その申込みを承諾する、承諾しない旨を契約の相手に書面によって通知することが義務付けられています。
違反行為
これらに違反している場合、産業経済省による是正の指示が行われますが、なお違反状態が続く場合は最高1年の業務停止とされます。
クーリングオフ
信販売における契約では、消費者にクーリングオフを活用することが認められています。(平成21年改正)クーリングオフは起算日から8日が期限となっています。→クーリングオフ

3.電話勧誘販売取引

電話勧誘販売取引においては、事業者には勧誘の際に氏名などを明示すること、書面の交付、承諾の通知が義務付けられています。違反行為に対しては是正指示がなされますが、それに従わない場合は業務停止もあります。電話勧誘販売については、クーリングオフ制度の適用も認められています。

氏名等の明示

電話勧誘販売を行う事業者は、相手方に対し、事業者の氏名・名称・勧誘者の氏名・対象商品の種類・その電話が売買契約又は役務提供契約の締結について勧誘をするためのものであることを告げることが義務付けられています。
電話勧誘販売における書面の交付

事業者は、電話勧誘により、顧客から指定商品について当該契約の申込みを郵便等により受けた場合は、申込みの内容を記載した書面を申込者に交付しなければなりません。記載すべき内容は以下のとおり。

@

A

B

C

D

E
商品若しくは権利又は役務の種類

商品若しくは権利の販売価格又は役務の対価

商品若しくは権利の代金又は役務の対価の支払の時期及び方法

商品の引渡時期若しくは権利の移転時期又は役務の提供時期

クーリングオフに関する事項

その他、経済産業省令で定める事項

承諾の通知

事業者は、指定商品・役務について当該商品の引渡しよりも先に代金の支払いを条件とする契約を結ぶ場合は、申込者からの郵便等により契約の申込みを受け、さらに当該商品・役務の代金を受領したときは、申込み承諾、または承諾しない旨を申込者に書面により通知することを義務付けられています。
禁止行為

電話勧誘販売を行う事業者は、電話勧誘販売による契約を締結と意思表示した者に対し、契約締結について勧誘を行うことが禁じられています。

事業者は、電話勧誘販売の電話勧誘をする時に契約の申込みの撤回・解除を妨げるため、不実のことを告げる、あるいは相手を脅迫するような行為をしてはならないとされています(クーリングオフの回避の禁止)。
違反行為
これらに違反している場合、産業経済省による是正の指示が行われますが、なお違反状態が続く場合は最高1年の業務停止とされます。

クーリングオフの活用
電話勧誘販売における契約では、消費者にクーリングオフを活用することが認められています。クーリングオフは起算日から8日が期限となっています。→クーリングオフ

4.連鎖販売取引(マルチ商法)

連鎖販売取引はいわゆるマルチ商法に当たります。商品の購買を増やせば、商品購買する際のマージンを稼ぐことができるという仕組みの取引です。連鎖販売取引には書面の交付が必要とされます。また、連鎖販売に携わる関連者には、広告の表示方法などに禁止事項が定められています。クーリングオフも認められており、20日間という期限が設定されています。
連鎖販売取引における書面の交付

連鎖販売業者は、連鎖販売取引をしようとする者とその特定負担(商品の購入や取引料の支払いなど)についての契約を締結しようとするとき、また、契約の相手側が特定負担を個人で行う場合は、契約の締結前に連鎖販売業の概要について記載した書面をその者に交付しなければならない、とされています。下記のような事項が記載されることが要求されます。

@

A

B

C

D

商品の種類・性能品質、役務の提供を受ける権利・種類など、内容に関する事項

商品の再販売・受託販売・販売のあっせんなどの条件に関する事項

連鎖販売取引に伴う特定負担に関する事項

クーリングオフに関する事項

その他、経済産業省令で定める事項

広告の表示方法

連鎖販売業者と関連者は、一連の連鎖販売業に係る連鎖販売取引について広告をするときは、次の事項を表示することが求められます。

@

A

B

C

商品又は役務の種類

当該連鎖販売取引に伴う特定負担に関する事項

連鎖販売業によって発生する特定利益について広告をするときは、その計算の方法

その他、経済産業省令で定める事項

禁止行為

連鎖販売業者は連鎖販売取引についての契約締結を勧誘するときに、その連鎖販売取引についての契約の解除を妨げるために次の事項について、故意に事実を告げない、あるいは不実のことを告げるような行為が禁止されています。

@

A

B

C

D

商品の種類・性能品質、役務の提供を受ける権利・種類など、内容に関する事項

連鎖販売取引に伴うに特定負担関する事項

クーリングオフに関する事項

連鎖販売取引に伴う特定利益に関する事項

その他、連鎖販売取引の相手方の判断に影響を及ぼすような重要事項


連鎖販売業関連者は、一連の連鎖販売取引について広告をするときは、その商品の性能・品質、役務の内容、当該連鎖販売取引に伴う特定負担、当該連鎖販売業に伴う特定利益などについて、著しく事実に相違する表示をすることや、人を誤認させるような虚偽の表示をすることが禁じられています。

違反行為
これらに違反している場合、産業経済省による是正の指示が行われますが、なお違反状態が続く場合は最高1年の業務停止とされます。
クーリングオフ
期限は20日間です。→クーリングオフ

5.特定継続的役務提供取引

特定継続的役務提供取引においても書面の交付が必要とされますが、それに加え、事業者には書類の備え付け・閲覧の許可を義務付けられています。特定継続的役務提供取引においては、クーリングオフ制度の適用が可能ですが、さらにまだ役務の提供を受けていないような部分についても解約が可能な中途解約制度が採用されています。
特定継続的役務提供における書面の交付

役務提供事業者・販売業者は、購入希望者と特定継続的役務提供等契約を締結しようとするときは、締結する前に、契約の概要について記載した書面を購入希望者に交付しなければなりません。具体的には次のような内容が要求されます。

@

A

B

C

D

E

F

当該役務の提供を受ける者が購入する必要のある商品がある場合の商品名

役務の対価、その他必要的費用の額

役務に対する金銭の支払の時期及び方法

役務の提供期間

クーリングオフ関する事項

中途解約に関する事項

その他、経済産業省令で定める事項

書類の備え付け・閲覧

役務提供事業者・販売業者は、特定継続的役務提供において前払取引を行うときは、その業務及び財産の状況を記載した書類を、事務所に備え置かなければならなく、契約の相手方がその謄本若しくは抄本の交付を求めた場合に閲覧を許可しなければなりません。
禁止行為

役務提供事業者・販売業者は、特定継続的役務提供等契約の締結勧誘に際して、特定継続的役務提供等契約の解除を妨げるために、購入者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものにつき、不実のことを告げる行為をしてはなりません。同時に、購入者を脅迫して困惑させるような行為も禁じられています。

役務提供事業者・販売業者は、特定継続的役務提供を提供・販売条件について広告をするときは、当該特定継続的役務の内容又は効果などについて、著しく事実に相違する表示をしたり、人を誤認させるような誇大表示をしたりしてはなりません。
違反行為
これらに違反している場合、産業経済省による是正の指示が行われますが、なお違反状態が続く場合は最高1年の業務停止とされます。
クーリングオフ

クーリングオフは起算日から8日が期限となっています。→クーリングオフ

中途解約制度

中途解約制度は、クーリングオフ期間が経過してもなお、役務の提供を受けていない部分に関して契約を解除することことができるとする制度です。解除の理由は問われません。また、関連商品の販売契約の中途契約も認められます。

6.業務提供誘引販売取引(内職商法、モニター商法)

業務提供誘引販売取引では、書面の交付が必要とされています。事業者には広告方法についても一定の要件が必要とされており、禁止行為も設定されています。クーリングオフも認められていて、その期日は20日間となっています。
業務提供誘引販売取引における書面の交付

業務提供誘引販売業者は、業務提供誘引販売取引についての契約を締結した場合において、契約の相手方が個人であるときは、業務提供誘引販売業の概要について記載した書面を契約の相手に交付しなければなりません。具体的には次のような事項が要求されます。

@

A

B

C

D

商品の種類・性能・品質、役務の種類、これらに関連する事項

商品・役務を利用する業務の提供・あっせんについての条件に関する事項

当該業務提供誘引販売取引に伴う特定負担に関する事項

クーリングオフに関する事項

その他、経済産業省令で定める事項

業務提供誘引販売取引についての広告

業務提供誘引販売業者は、その業務提供誘引販売業に係る業務提供誘引販売取引について広告をするときは、その業務提供誘引販売業に関する次の事項を表示しなければならないとされています。

@

A

B

C

商品・役務の種類

当該業務提供誘引販売取引に伴う特定負担に関する事項

業務提供誘引販売業に関して提供する、あるいはあっせんする業務について広告をするときの業務の提供条件

その他、経済産業省令で定める事項

禁止行為

業務提供誘引販売業者は、その業務提供誘引販売取引についての契約を個人と行う場合、その業務提供誘引販売取引契約の解除を妨げるため、次の事項につき、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為をしてはならないとされています。

@

A

B

C

D

商品の種類・性能・品質又、役務の種類及びこれらの内容に関する事項

業務提供誘引販売取引に伴う特定負担に関する事項

クーリングオフに関する事項

業務提供誘引販売取引に伴う業務提供利益に関する事項

その他、業務提供誘引販売取引の相手方の判断に影響を及ぼすような重要事項


業務提供誘引販売業者は、その業務提供誘引販売取引について広告をするときは、当該業務提供誘引販売取引に伴う特定負担・業務提供利益・その他の経済産業省令で定める事項について、著しく事実に相違する表示をすることや、有利であると人を誤認させるような表示をすることが禁じられています。
違反行為
これらに違反している場合、産業経済省による是正の指示が行われますが、なお違反状態が続く場合は最高1年の業務停止とされます。
クーリングオフ
クーリングオフは起算日から20日が期限となっています。→クーリングオフ